妻が群発頭痛です

妻が群発頭痛です
女性 群発頭痛

妻は群発頭痛という病気を患っています。
妻とは大学時代から7年の交際を経て、結婚。結婚生活も、あっという間に5年が過ぎました。
群発頭痛という病気に対し、パートナーという立場で何をしてあげられるか、何をしてきたか、何を考えてきたか…今回はそういうお話です。
※この記事は妻の同意を得て書いています。

もし自身が群発頭痛を患っていてパートナーの人生を巻き込みたくないと考えている方や、パートナーが群発頭痛で苦しんでいるけど向き合い方がわからないという方に向けて、すこしでも参考になればいいなと思います。

※当方、医療の専門知識は乏しいのであくまで素人目線であり、そして患者本人目線ではない人間のお話です。いろいろ認識の間違った部分もあるかもしれませんが、そこはご了承ください。

群発頭痛はどんな病気?

群発頭痛はその名の通り頭痛なのですが、通常の頭痛…というと変ですが、よくある頭がガンガンするというレベルではなく、のたうち回るほどの激しい痛みが突如襲ってくる病気です。一度の発作でピークの痛みが数十分から長いときは数時間続き、その発作を数日間~数か月繰り返します。

群発頭痛は「世界三大激痛」(もしくは「世界三大疼痛」)の一つと言われており、残り2つは尿路結石・心筋梗塞と言われています。知名度の高い尿路結石と心筋梗塞に比べ、群発頭痛はやや知名度が低いように感じますが、世界三大激痛と言われるのも納得できるほど発作時の苦しみ方は壮絶です。別名「自殺頭痛」とも言われていて、あまりの痛みに耐えかねて自殺する方もいるほどだそうです。
最近では芸能人で自身の群発頭痛を公表する方もいて、テレビで取り上げられたことなどもあって以前よりは世間に知られるようになってきたと感じています。
ハリー・ポッターのダニエル・ラドクリフさん、サカナクションの山口一郎さんも群発頭痛を患っていることを公表しています。

妻曰く、その痛みは「眼球とこめかみから焼けた鉄の棒を突っ込まれて、脳みそをかき混ぜられているような痛み」とのことです。

妻は群発頭痛と10代の頃から付き合っていて、何度も病院で治療を試みたのですが原因は未だにはっきりとはわかっていないそうで、現状完全に治す方法はありません。今のところは発作が起きた時に、薬で鎮静化させる、もしくは高濃度の酸素吸入による対処療法しかないようです。研究が進んでいない背景には、この病気は1000人に1人と症例が少ないこともあるのかもしれません。

妻の群発頭痛はその症状から「反復性の群発頭痛」に分類されます。
発症時には目の充血と鼻水を伴い、頭全体ではなく片側に痛みが集中します。発作の期間は人それぞれですが妻の場合は1週間~1か月程度で収まります。決まった時間帯に発作が出やすく、市販の鎮痛剤はほとんど効きません。一度発作期間が収まると、次の発作までは約1年程度。
発作が年間を通して一回もなかった年は、今まで10年間で2回だけ。
妻の場合は上記のような周期ですが、中には慢性の群発頭痛を患っている方もいらっしゃいます。

痛みは自分にしかわからないため、重い偏頭痛を群発頭痛だと誤認されている方もいるそうです。
群発頭痛ではない場合の激しい頭痛は命に関わるサインの場合もあるので、必ず病院で検査されることをオススメします。

群発頭痛は男性に多い病気…でも女性の患者もいる

只でさえ症例が少ない群発頭痛ですが、この群発頭痛は主に男性に多いといわれているそうです。
お医者さんによっては「女性で群発頭痛はあり得ない」と考えている方もいて、妻が長年通った病院でも上記の理由から「女性だから群発頭痛ではない」と断言されてしまっていました。群発頭痛として診断してもらえない中でも頭痛を抑える飲み薬を処方してもらっていたようですが、あまり即効性のあるものではなく、あまりの辛さから発作が起きる度に薬に頼ってしまい一時期中毒化していたこともあるそうです。

20代になってから藁にも縋る思いで別の脳神経外科に行ったところ、ようやくそこで群発頭痛と診断してもらうことが出来たそうです。ずっと痛みに耐え、症状を調べて「自分は群発頭痛ではないか?」と自分の中では思っていたのに、長年「女性の患者はいない」と言われ続け…
セカンドオピニオンでようやく群発頭痛と診断され、「辛かったね」と声をかけられた時は涙が止まらなかったそうです。

現在でもその脳神経外科にお世話になっていて、イミグランという皮下注射を定期的に処方してもらっています。この注射は発作時に自分で太ももに注射を打つタイプのもので、自己注射用のキットをセットして、アルコール消毒をしたのちボタンを押して射出するというものです。
※妻は皮下注射を使用していますが、イミグランは頓服薬、点鼻薬もあるそうです。

注射はバチンッと音を立てて勢いよくバネで刺さり薬剤が注入されるようですが、注射が苦手な自分は見ているだけでも怖いです。現に妻も打つときは「ウッ!」と声が出るほど痛がっています。でも本人曰く、自分で注射する恐怖がマヒするほど頭痛の方が痛いとのことで、群発頭痛の発作時はそれほど辛く、ある意味正気ではないという事なのでしょう。

現在はイミグランが一番即効性が高いそうで、注射してから約15分で症状が和らいでいくそうです。なので発作が起きた際は我慢せずに、軽い症状のうちに注射を打って早めに抑え込むようにしているようです。また発作が来ても、もしもの時は注射があるという精神的な安定にもなっているようです。

発作時に医療用の高濃度酸素吸入を行うという方法もありますが、酸素吸入の機器レンタル代は月額数万と高額です。人によって頻度はまちまちだと思われますが、年に数回の発作に備えて月額数万の機器レンタルを続けていくことは現実的ではなく、なかなかこちらは導入が難しいと思います。病院によっては専用の機器ではなく、医療用の酸素ボンベと吸入器を安価で提供してくれるところもあるそうです。

数年前に「帯状疱疹ワクチンが群発頭痛の発作を抑える可能性がある」という情報を聞き、福岡市内のとある病院でワクチンを打ってもらいました。その病院では医師の先生が「まだはっきりとはわかってないけど、研究結果としてデータが出てきているので群発頭痛と帯状疱疹は何らかの関係性があるんだろう」という風に考えられており、すぐにワクチンを打ってもらえました。
妻が帯状疱疹ワクチンを打ってから数年になりますが、体感としては発作はゼロにはならなかったものの、症状が以前より軽かったり頻度が下がったり、発作が長期化しなくなったと感じているようです。

「たかが頭痛」という周りの意識

「群発頭痛はとてつもない激痛だ」と言われても自分はどうしてもその痛みをわかってあげられません。しかし発作時の激しい痛みに苦しむ妻の姿は、自分の普段経験している頭痛とはあまりにもかけ離れた痛みを感じていることが容易に想像できます。毎回発作時は「このまま妻が壊れてしまうのではないか、死んでしまうのではないか」と自分も怯えてしまっています。

例えばの話ですが、友達と約束をしていて「ごめん、頭痛がひどくて今日は無理そう」と言われてドタキャンされたらどう思いますか?「いいよ、また今度!」って言いながらも「頭痛くらいで…」と思う人も少なくないのではないでしょうか。頭痛という単語はポピュラーで、みんな多かれ少なかれ経験したことのある痛みであるからこそ、「頭痛くらいで…」となりやすいのではないでしょうか。

妻も学生時代から発作が起きた時に「頭痛がひどいので休ませてほしい」と言って、何度も「頭痛くらいで」という反応をされてきたそうです。でも自分も妻と出会っていなかったら、群発頭痛のことを知らなかったら、もしかしたらそういう考えのままだったかもしれません。言ってしまえば群発頭痛という病気の知名度が低い現状では、言い方は悪いですがこれが「一般的な感覚」となってしまうのだと思います。なので、群発頭痛という想像を絶する頭痛もあるという認識がもっと一般的になればいいなと感じてます。

群発頭痛に対する周りの理解

最初の方にも書きましたが、自分が学生時代に妻と出会ってから7年間交際期間がありました。その間、同棲はしていませんでしたが旅行先で群発頭痛の発作が起きることが何度かありました。結婚までの交際期間が長かった理由の1つは、妻が自身の群発頭痛の発作によって相手の人生を狂わせてしまうかもしれないと苦悩していたからです。

当初自分が思い描いていた結婚生活と、妻が描いていた結婚生活はとても温度差があり、その差を埋めるために時間がかかりました。それは自分が群発頭痛のことを甘く考え、楽観視していたからです。
いよいよ結婚するかという時に、妻から「群発頭痛のことをちゃんと調べてみてほしい。そしてそういう人間と一生暮らしていくということをわかった上で判断してほしい」と言われました。自分なりに群発頭痛の発作に苦しんでいる方の動画を見たり、記事を読んだりしながら妻と話し合った末に納得して結婚しました。

妻の場合、群発頭痛の発作が起こる(起こりやすい)周期が年に数回あります。
ですがそれ以外の期間に全く発作が来ないわけではなく、何かが引き金になって突如発作が起きることがあります。例えば仕事が忙しくてストレスを貯めていたり、睡眠不足が重なったり、または飛行機の移動などで激しい気圧の変化を受けた時…ひとそれぞれ引き金は違うと思いますが、日常発作が起きないように気を付けていても、それを自身でコントロールすることは難しいようです。

群発頭痛を持つパートナーにしてあげられること

交際期間中はお互い別々の家(自分は一人暮らし、妻は実家)で暮らしていたので、妻に発作がいつ起きるかなんてわかりませんでした。ある日急にメールが返ってこなくなったり、そっけない簡潔な文面に変わるので、最初は怒ってるのかと思っていました。振り返ってみれば自分が無理解だった部分もあり、その対応に普通にイラッとしたりもしていました。
ですが実際は発作中はメールを打つのも厳しい状況で、「うん」とか「はい」とかを打つだけでも精いっぱいという状況だったという事が徐々にわかってきました。なので、そのうち「あ、この雰囲気、もしかして群発頭痛かな?」と察するようになりました。

一緒に旅行に行ったとき、はじめて発作を目にしたときはとにかく焦りました。トイレを探したり、とりあえず荷物を持ったり、横になれるように早めにホテルに連れて行かなければと、とにかく何をしていいかわからず混乱しました。

発作が起きるたびに心配する自分に対し、妻がよく言っていたのは「あなたに何もできることはないから、ほっといてもらって大丈夫」という言葉でした。
これは一見冷たく聞こえますが嫌味でもなんでもなく、本当に群発頭痛の前では何かしてもらったら治るという事はなく「発作が収まるのを待てばいいだけだから気にせず普通に生活しててね」という妻からの精いっぱいの優しさだったのだろうと思います。

「群発頭痛の発作時には、本人にとにかく余裕がない」
それを前提で考えなければ、「なんだよ、こっちが心配してやってんのに!」とさらに相手を追い詰めることになってしまいます。自分も最初はそういう気持ちになってしまっていましたが、何度も経験するうちに「ああ、頭痛で余裕がないんだな」と理解できるようになりました。

ですが、そんな中でも何度も発作を見ていると少しずつ。
自分でもしてあげられることを見つけられるようになりました。

まず我が家の場合ですが発作は夜中に多いのです。
妻が苦しみ始めたら一緒に起きて、冷凍庫にある氷枕(凍っても柔らかいタイプ)にタオルを巻いたもの、あとはビニール袋に氷と水を入れたものを持ってくるようにしています。カチカチの硬いものよりも、なるべく頭全体に密着するような状態のものがいいようです。頭痛は冷やすと痛みがまぎれるようで、この二つを用意するようにしています。そしてコップ一杯のお水や経口補水液、ポカリスエットなどを持ってきています。

妻の場合、発作時は視覚・嗅覚・聴覚が鋭敏になり、そのどれもが頭痛を増幅させる刺激に代わります。発作が収まっても何かが引き金になって再発することもあるので、まぶしい光や妻が苦手な匂い(香水・体臭・食べ物のにおい)、大きな物音や人の話し声を避けられる環境をまずは作ってあげる様にしています。なので、起きても急に部屋の電気をつけたりせず、必要なものがあればとってきてあげるようにします。例えばテレビを見ている時間だったら、音を下げてあげたり、もしくは消してあげたり…自分が食べるだけでも、匂いの強い食べ物は避けたり…

あとは、頭をマッサージしてあげると痛みが紛れるようで、頭のてっぺんや耳の周り、首などを指先で押さえてあげています。人によっては発作時に頭を自分でガンガン叩く人もいるようです。

これは自分がしてあげている事ではないのですが、発熱用の熱さまシート(冷えピタとか色々ありますが)は常に冷蔵庫に備蓄されています。妻は群発頭痛以外にも日ごろから偏頭痛もあるようなので、軽い症状の時はかなりこれに助けられているようです。

あとは「自分ができる限り普通に楽しく生活すること」
これは妻自身の「発作によって相手の生活を壊したくない」という気持ちを毎回感じているので、自分はしてあげられることをする以外はできる限り普通の楽しい日常を送るようにしています。

「何をしてあげられるか・何をしてもらいたいか」は人によって違うと思いますが、パートナーとして「頭痛くらいで…」と自分の価値観だけで考えず、群発頭痛が自分の想像を絶する痛みであることを理解してあげることが第一歩だったと思っています。

群発頭痛を持つパートナーとの生活について

これに関しては、自分は綺麗事抜きでそこまで「苦」を感じていません。
むしろ人より楽しく仲睦まじく結婚生活を送っているとさえ思っています。
最初は妻の苦しむ姿と何もできない自分に「大変だな」と思った時期もありましたが、理解が進めば風邪の看病と大した違いはないと思っています。看病する側としてはむしろ感染するものでもないので、対処法さえわかっていれば風邪よりぜんぜん楽です。
パートナーが風邪をひいたら看病する。お互い様だし、当然のこと。それが群発頭痛に置き換わっただけで、まったく一緒かなと思っています。

だからと言って、「群発頭痛を持ったパートナーとの結婚生活は全然問題ないよ」と安易に言えるものでもないです。やっぱり何度も言うようにお互いに理解と覚悟が必要で、結局はお互いの思いやり次第だと感じます。

群発頭痛のあまりの激痛に一日中嘔吐し続け、頭痛は皮下注射で収まったものの深夜まで栄養が取れずに身体が衰弱し、このまま明日を待つと妻が死んでしまうかもしれないと慌てて深夜の救急病院に連れて行ったこともありました。その救急病院の受付の方から帰り際に「自分も群発頭痛だったんです。つらいですよね。」と声をかけて頂いたことを今でも覚えています。たしか普通の平日で帰宅したのは夜中の3時~4時。次の日も朝から出勤でしたが、普段から4時頃まで起きている(ゲームで)ので大したことありませんでした。

そこまで苦を感じていないと言いましたが強いて挙げるとすれば、
妻が群発頭痛によって自分に迷惑をかけていると罪悪感を感じている事が辛いなと思っています。
自分は全く大変でもなく、辛いとも思っていないのに「ごめんね」と謝る姿を見ることが辛いです。
一番辛いのは妻なのに「ごめんね」と言わせてしまってる事。

自分は元々夜更かし大好きショートスリーパーの寝起きすっきり人間なので、
「妻が群発頭痛なので辛い」とは思ったことがありませんが、夜中に起こされるのが辛いと感じる人もいると思います。でも一番辛いのは誰なのか、それは激痛に耐えながら苦しむ姿を見ればその不満を飲み込むことができるのではないでしょうか。

自分は妻の痛みを完全にはわかってあげられません。
痛いんだろうな、と想像するくらいしかできません。
代わってあげたいけど、代わってあげられない。
だったら病気のことをできる限り理解してあげるしかない。
自分の中の「頭痛」と、群発頭痛の「頭痛」を同じ物差しで測ってはいけない。

群発頭痛は突如あっけなく症状が収まるそうです。
ある年齢を境に、出産を境に…経験談として諸説あるようですが、
いつか妻の頭の中の曇り空が晴れる日が来るのでしょうか。
少しでも早く妻が痛みから解放される日がくればいいなと思っています。

群発頭痛当事者の方であったり、パートナーが群発頭痛という方、
同じ苦しみ・悩みを持っている方がこの記事を読んで、少しでも参考になったり前向きになってもらえたらいいなと願っています。

ではでは。